腸内フローラとプレバイオティクス(ルミナコイド)

はじめに

腸内環境は、腸内フローラとも呼ばれます。腸内(特に小腸から大腸にかけて)には、約1,000種100兆個の多種多様な細菌が生息していて、これらのパワーバランスが腸内環境を形作っています。細菌が群生する様子を「お花畑(flora・フローラ)」に例えた単語が「腸内フローラ」です。

昔から、便通と肌状態、ひいては腸内フローラと肌状態の関係性は経験則から、腸内フローラのバランスが良い(善玉菌優性)になると快便で、肌も健やかで美しい状態に保たれやすいことが知られていましたが、近年では「腸内細菌は身体全体を制す」と言われるほど腸内フローラは生命科学分野でも注目されています。

例えば、腸内フローラが良好な状態になると、肌の水分量とキメが増すことが報告されています。また、美容成分である各種ビタミンや天然保湿因子(NMF)が善玉菌によって生産されることもわかっています。

美容以外にも、シビアな学術領域・医療領域での研究報告を枚挙するといとまがありません。これを受けてか一般消費者市場においても「腸活」なる単語が登場し、需要供給が形成されつつあります。

  • 腸内フローラと免疫(アレルギー、感染症予防含め)
  • 腸内フローラと癌
  • 腸内フローラと癌免疫治療の奏功率
  • 腸内フローラとうつ症状
  • 腸内フローラとアルツハイマー
  • 腸内フローラと糖尿病
  • 腸内フローラと健康長寿
  • etc.

腸内環境を整える方法

プロバイオティクス

但し、一般消費者市場における「腸活」は供給者側の誘導に踊らされている感があります。例えば「腸活」を「腸内フローラの状態を良好にすること」と定義してみます。このような状態を作り出すための有効性の高い方法として、どのような手段が挙げられるでしょうか?

  1. 善玉菌(乳酸菌やビフィズス菌)を増やす?
  2. 善玉菌を増やすために、乳酸菌やビフィズス菌を飲用する?
  3. 飲用する乳酸菌やビフィズス菌は「生きたまま」腸に届ける必要がある?

❶は正解です。そして❷と❸は微妙です。

最近の一般消費者市場は、「乳酸菌やビフィズス菌を生きたまま腸に届ける」という考え方を基軸に、供給側(メーカー)は「生きたまま届ける工夫」をマーケティングコンセプトとし、需要側(一般消費者)はメーカーに上手に誘導されているという関係性です。

腸内環境を整えるに際し、「乳酸菌やビフィズス菌を生きたまま腸に届ける」というアプローチはプロバイオティクスと呼ばれ、確かにそれなりの有効性が認められます。敢えて「それなり」と記載したのは、このアプローチは一般消費者が連想するほどに有効性は高くないためです。

よく「乳酸菌100億個、生きたまま届けます」のようなキャッチが目に飛び込みますが、100億個のうち何割が「生きたまま」腸に届くのでしょうか?よしんば100%届くと仮定して、腸内にもともと住んでいる100兆個もの腸内細菌にとって、100億個程度のインパクトはいかほどでしょうか?プロバイオティクスには確かに有効性を示す商材もあります。しかし、飲用した善玉菌は腸内に定着することなく、3日~7日程度で身体外に排出されてしまうことはあまり知られていません。

プレバイオティクス

実は、乳酸菌やビフィズス菌などの善玉菌を「生きたまま」腸に届けなくても、腸内環境を整えるには十分です。例えば、有名な整腸剤の「ビオフェルミン」は死んだ善玉菌の錠剤ですが、「お腹の調子を整える」という明白な整腸作用を発揮します。このように「生きてない善玉菌」であっても、腸内に生息する各種細菌の代謝活動に寄与し、腸内フローラを良化してくれます。

ここで「各種細菌の代謝活動」に注目です。代謝のわかりやすい事例は、人間が食からエネルギーを得、不用分を排便により排出する一連のサイクルです。人間と同様に、腸内に住み着いている各種細菌も日々代謝しており、腸内フローラを良好に整えるアプローチとして、近年ではプロバイオティクスよりも「腸内細菌の代謝」を促すことの有効性が注目されています。これは、腸内の各種細菌の内、善玉菌に類する細菌が活性化する餌を与え、腸内環境を善玉菌優性しようという考え方で、プレバイオティクスと呼ばれます。

ルミナコイド

先の「生きていない善玉菌」もプロバイオティクスの一種ですが、より積極的に腸内フローラを整える有効成分として「ルミナコイド」が挙げられます。ルミナコイドとは、食物繊維や一部の炭水化物のうち、「小腸を通過して大腸まで届き、大腸の腸内細菌に代謝されて腸内フローラの良化に寄与する成分」で、イヌリン(食物繊維の一種)やレジスタントスターチ(炭水化物の一種※デンプン質※)等が事例です。

厚生労働省が「1日の食物繊維摂取目安量」として数値目標を掲げていますが、なかなかどうして、この値は当て推量ではなく栄養学上の根拠があるのです。さらに、日本食物繊維学会はより実態と臨床に則した形で、「食物繊維」ではなくプロバイオティクスとしての「ルミナコイド」という単語を再定義し、その推奨摂取目安量も含めて広く普及させようと活動をはじめています。ちなみに、食物繊維摂取量が男性21g/日以上、女性18g/日以上とされますが、腸内フローラに注目するのであればこれは不足で、性別に関わらずルミナコイド30g/日を推奨したいところです。

最後に

  • 腸内フローラと免疫(アレルギー、感染症予防含め)
  • 腸内フローラと癌
  • 腸内フローラと癌免疫治療の奏功率
  • 腸内フローラとうつ症状
  • 腸内フローラとアルツハイマー
  • 腸内フローラと糖尿病
  • 腸内フローラと健康長寿
  • etc.

臨床や学術研究、先端医療で腸内フローラを良好に保つ様々なエビデンスが示されています。これらの恩恵を十分に享受するためにも、腸活にチャレンジし、チャレンジするのであればできるだけ正確な知識をもって腸内環境にアプローチしたいものです。